試験方法
耕種概要を第1表に、肥料の種類と施肥法別投入量を第2表に示した。試験期間は1993年10月から1998年6月、年一作で6年栽培した。試験はガラス温室2棟(1棟92m
2、腐蝕質黒ボク土)で実施。供試品種はハウス桃太郎とサンロードである。
有機質肥料区には菜種油粕、発酵鶏糞,かに殻、骨粉、牛糞堆肥を施用した。比較対照の慣行肥料区は窒素成分として化成肥料67%、有機質肥料33%の割合で施用した。
本試験では、有機質肥料の窒素肥効率を、菜種油粕・発酵鶏糞・かに殻・骨粉は各々70%、牛糞堆肥は30%として算出し、両区の窒素成分量を同一にするよう努めた。
施肥法としては全面施肥区と溝施肥区を設けた。溝施肥区は施肥量の半分をベッド中央の幅40cm、深さ40cmの溝に施用し、残り半分を全面に施用し耕耘した。
調査項目は等級別収量及び果実の糖度と硬度とした。
結果の概要
(1)収量について
有機質肥料区は初期成育が遅れ、収穫開始時期が慣行肥料区に比べて7日ほど遅れた。上物収量は有機質肥料区は慣行肥料区に比べ全面施肥では第3作まではほぼ同等であったが、第4作以降では多くなった。溝施肥では全般的に多い傾向があり特に第3作と第6策で多かった。
有機質肥料区内の比較では、溝施肥が全面施肥に比べ第5作と第6作で上物収量が多かった。有機質肥料を連用した場合、総収量がほぼ同等でありながら4作目以降の上物収量多くなった要因は、くず果及び変形果が減少し、上物率が高くなったことによる。
また、溝施肥区で特に上物収量が多くなった理由としては初期の生育は遅れるものの収穫開始以降は根張りが良くなり、肥料が無駄なく吸収されることを指摘できる。根張りの良いトマトは水分の過不足、及びハウス内の温・湿度の変化に対して生育、収量が安定しているとの報告がある。
(2)果実の品質
糖度は年次間差はあるものの、肥料の種類、施肥法の違いによる明確な差は見られなかった。硬度についても同様に明確な差は認められなかった。
まとめ
トマト作に対し、化学肥料を用いず有機質肥料のみを利用した栽培法を6年続け、慣行栽培法と比較した。
前述したように、慣行栽培に比べ初期成育がやや遅れ収穫開始時期も遅れたが、総収量に差がなかったばかりかくず果や変形果が減り上物収量は同等かむしろ優る傾向さえ示した。品質の一指標としての果実の糖度,硬度では差異は認められなかった。
6年6作の試験期間は長いとは言えない。両区の差異などの要因の追求までには至っていないが、環境問題対応から意義ある結果として多くの示唆を与える。有機質肥料は全面施肥より下層まで深く施した溝施肥で上物収量が優ったことなどこの栽培法は根張りを良くし、肥料が無駄なく吸収されるのではないかと考えられる。
有機質肥料のみの栽培の実際化のための留意点を二つ示しておく。
一つは経費である。肥料代が高くなるのではとの心配である。本試験で用いた肥料例で算出した結果、慣行区と同等であった。菜種油粕と発酵鶏糞を主体とした有機質肥料の施肥設計にすれば、慣行施肥とほぼ同じ経費になると考えてよい。
もう一つは作業性である。有機質肥料は化学肥料に比べて、総投入量が多く、種類も多いため、散布時の作業量は増える。
第1表 施設トマトの耕種概要と施肥量
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| 品種 |
播種日 年.月.日 |
定植日 年.月.日 |
収穫 段数 |
施肥量(N-P-K) |
| 有機質肥料区 |
慣行区 |
| 第1作 ハウス桃太郎 |
93. 10. 30 |
94. 1. 17 |
8 |
3.9 - 4.9 - 2.6 |
4.1 - 4.5 - 3.6 |
| 第2作 ハウス桃太郎 |
94. 7. 12 |
94. 9. 2 |
6 |
2.1 - 3.0 - 1.2 |
2.0 - 2.3 - 1.1 |
| 第3作 サンロード |
95. 1. 9 |
95. 3. 6 |
6 |
1.8 - 2.4 - 1.2 |
2.0 - 2.3 - 1.8 |
| 第4作 ハウス桃太郎 |
95. 9. 28 |
95. 12. 3 |
8 |
2.8 - 4.5 - 2.2 |
2.8 - 3.6 - 2.4 |
| 第5作 ハウス桃太郎 |
96. 9. 20 |
96. 11. 14 |
8 |
2.6 - 3.9 - 1.9 |
2.7 - 3.2 - 2.3 |
| 第6作 ハウス桃太郎 |
97. 9. 26 |
97. 11. 27 |
9 |
2.5 - 3.2 - 2.3 |
2.5 - 3.3 - 2.2 |
第2表 肥料の種類と施肥法別投入量
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| 肥料名 |
有機肥料 |
慣行肥料 |
| 全面施肥 |
溝施肥 |
全面施肥 |
溝施肥 |
| 全面部 |
溝部 |
全面部 |
溝部 |
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kg/a |
kg/a |
kg/a |
kg/a |
kg/a |
kg/a |
| 菜種油粕 |
15.0 |
7.5 |
7.5 |
5.0 |
2.0 |
3.0 |
| 発酵鶏糞 |
15.0 |
7.5 |
7.5 |
5.0 |
2.0 |
3.0 |
| かに殻 |
6.0 |
3.0 |
3.0 |
5.0 |
2.5 |
2.5 |
| 骨粉 |
8.0 |
4.0 |
4.0 |
5.0 |
2.5 |
2.5 |
| IB化成 |
0 |
0 |
0 |
5.4 |
2.7 |
2.7 |
| ロング140 |
0 |
0 |
0 |
6.4 |
3.2 |
3.2 |
| 牛糞堆肥 |
700.0 |
300.0 |
400.0 |
200.0 |
100.0 |
100.0 |
| N-P-K |
2.8 - 4.5 - 2.2 |
2.8 - 3.6 - 2.4 |