| 一宮町東浪見 |
| 相 重広さんの水耕トマト栽培 |
長生農業改良普及センター
若梅 均 |
経営の概要と変遷
相さんは、大型ハウス600坪でハイポニカによる年一作長期取りの水耕トマト栽培をしています。両親が担当している春トマト+抑制キュリの土耕ハウス400坪と併せて1000坪のハウスでトマトを中心とした経営を行っています。
今年で八作目となる水耕トマトへの転換の思いは、学生時代に溯ります。もともと興味のあったトマト栽培、技術の習得と何か新しいことに期待を持って千葉県農業大学校を卒業後、一年間、千葉県農業試験場(現農業総合研究センター)の野菜研究室へ研修に行きました。そこで、トマトへの更なる興味と水耕栽培への魅力を感じ、研修を終了し、就農しました。
就農後、数年間は地域の一般的な作形である春トマト+抑制キュリの土耕栽培を両親とともに行いながら、水耕栽培のための準備をしました。問題となったのは原水(地下水)で、九十九里地域では溶液栽培に適さない地下水が多く、栽培上の大きな障害となっています。また水耕は施設装備費が高く、資金調達及び投下に見合う採算性、さらに労力も課題の一つでした。
そして、果実の大型選果場グリーンウエーブ長生の稼動を前年に控えた平成6年、総合資金を借りて、逆浸透膜装置を使ったハイポニカシステムを既存ハウス600坪に導入し、栽培を始めました。
現在の作型は、八月上旬播種、約10日後の本葉二枚前後で定植、十月下旬から七月上旬まで収穫します。品種はハウス桃太郎で、肥料は単肥配合です。栽培三年目の時、青枯れ病が蔓延して春に収穫が終了してしまったこともありましたが、現在は順調で、同じ一宮町の水耕グループの中でもトップクラスの収量を上げています。
一宮町水耕グループ
相さんがトマトの水耕栽培を始めたとき、一宮町には当時三名の水耕トマトの栽培者がいましたが、水耕のシステムや水道水の利用、肥料の施用法など、同じような栽培方式はありませんでした。しかし、相さんが始めてからは、地域の中で、相さんと同じ方式で新たに三名の青年が水耕トマト栽培を開始しました。
相さんの栽培を近くで見ていて、同じ世代の同じような春トマト+抑制キュリ栽培の青年たちが、トマトの安定生産を目指して後に続いています。現在、四名の青年たちで勉強会グループを結成し、定期の培養液分析結果をもとに毎月一回、メンバー全員の栽培ハウス巡回を普及センター、メーカーとともに実施し、栽培および経営について相互研鑽をしています。また、そのグループ内で品種比較や培養液などの試験検討を行っています。
今後について
相さんのハウス被覆資材は、硬質プラスチックで八年目になります。ハウスによっては太陽光線の透過率が悪いところもあり、生育がやや徒長気味の棟もあります。そろそろ被覆資材の張替えを検討していますが、作物の生育や、マルハナバチの利用、病害虫の発生、ハウス内資材の劣化なども考えて、UVソーラーを含めた紫外線カットフイルムに興味を持っています。
また、数年後の目標として水耕栽培の面積を1200坪くらいに増やし、パートを導入した水耕専作経営を目指しています。
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| 花き類に寄生するネギアザミウマの被害と対策 |
千葉県農業総合センター
暖地園芸研究所
三平東作 |
アザミウマは別名スリップス(Thrips)と呼ばれるアザミウマ目に属する昆虫で、多くの植物に寄生することが知られています。カーネーション、バラ等の花き栽培では、アザミウマが花蕾や花に寄生すると、花弁のかすれや汚れを生じ、商品性が著しく損なわれることから、重要な害虫になっています。花き類に寄生するアザミウマは数種類が知られており、近年、千葉県南地域ではネギアザミウマによる被害が増加しています。
生態と被害
全世界に広く分布し、アブラナ科、キク科、ウリ科、ナス科など、多くの作物に寄生します。植物にえそ症状をひきおこすトマト黄化えそウイルス(TSWV)などのウイルス病を保毒、伝搬することがあります。
成虫の体長は1.1〜1.6mmと微小なため、虫を確認するためには、被害葉や花をルーペで観察する必要があります。また花に寄生している虫は、内部に隠れているので、振動させたり、息を吹きかけると這い出してきます。 卵を茎や葉の組織中に産み、一齢幼虫、二齢幼虫を経て成熟し、株元に降りて、地表や敷きわらの下などで蛹となります。二齢幼虫、蛹とも淡黄色で、体長は0.7mm程度です。関東以西では、露地のネギ類などに寄生して成虫で越冬します。バラ、カーネーション、ガーベラ等の施設栽培では周年的に発生し、特に春〜夏に寄生密度が高くなり、被害も増加します。
海外では、雌雄共にみられる有性生殖型個体群ですが、日本では雄成虫が存在しない単為生殖型個体群しか確認されていません。25℃における卵から成虫までの発育所要日数は16〜17日、成虫は一日あたり約4個、総数で平均70個程度産卵します。 ガーベラ、キクでは、葉と花に寄生し、葉が加害されると、葉脈に沿って白いかすり状の食害痕や葉裏のシルバリングを生じ、外観を著しく損ないます。バラやカーネーションでは、新芽先端の黒ずみや白斑、新葉の湾曲と萎縮が起こり、多発すると展開が止まります。
花弁が加害されると、色素が抜け、白色のかすり状になったり、縁から枯れ込み、花腐れの原因になることもあります。トルコギキョウやカーネーションの外観的被害は花色の濃い品種ほど大きくなる傾向があり、白色系品種ではほとんど問題になりません。
防除対策
アザミウマの防除は、薬剤防除が主体ですが、一般的には他の害虫と比較して、薬剤の効果が低いことが問題になっています。従来、ネギアザミウマは、薬剤抵抗性は問題とされず、有機リン剤や合成ピレスノイド系農薬での防除が可能でした。しかし近年、千葉県のネギ産地から採集される個体群では薬剤感受性の低下が報告され、特にマクロライド系やピロール系農薬の効果の低いことが問題になっています。
また、花き栽培では、蕾へのアザミウマの寄生が多く認められ、蕾内部に寄生した虫体には物理的に薬剤がかかりにくいことも薬剤効果が低い原因と考えられます。
このように、ネギアザミウマは薬剤防除が困難な害虫となりつつあり、発生源の除去を中心とした防除や防虫ネット等を用いた方法を併せて実施することが必要と考えられます。さらに、収穫残渣を放置したことにより、隣接地に虫が大量に移動し、被害が拡大した事例もみられます。圃場内外の雑草や収穫残渣は必ず圃場から持ち出し、焼却や埋没などの方法で発生源を根絶することが重要です。また、施設開口部への防虫ネットの展張は外部からの進入防止に効果があります。このほか、マルチ栽培は幼虫の蛹化を防ぐ手段として有効です。
アザミウマ類に対しては、天敵として、捕食性カブリダニとヒメハナカメムシ類が野菜では登録されています。しかし、天敵の利用は、天敵放虫の害虫密度、温度、併用可能な化学農薬の選択など、考慮しなければならない点が多く、殺虫剤を単独で防除に用いる場合よりも難しいと言えます。
花き類では、天敵が寄生増殖している花自体を商品として出荷してしまうことや、一般的に要防除水準が高いなど、天敵昆虫の増殖に不利な要素も多く、天敵を利用した総合的害虫管理については今後さらに研究を進める必要があります。
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| 大栄町前林 大栄花園 |
| 高橋 照典さんのシクラメン生産 |
香取農業改良普及センター
藤沢 由美子 |
十一月の大栄花園 成田空港に程近い大栄花園では、十一月になり、シクラメン満開の時期を迎えたハウスで,園主の高橋照典さんが忙しそうにしています。「七月が暑かったからね・・。でも、いい株になったでしょう?」と、見せてくださったシクラメンは、充実した株に高さの揃った花がぎっしりと咲いている素晴らしい品物です。また、ハウス内を見回すと、見たこともないような色や形のシクラメンが沢山あるのも高橋さんのハウスの特徴です。高橋さんは全国的にも有数な高品質シクラメンの生産者として知られていますが、シクラメン育種家としても非常に高名です十一月は咲いたばかりの花を見て、親株を取り出したり、今年の交配のイメージをつくったりする大事な時期でもあります。
シクラメン生産と育種への取り組み
高橋さんは昭和四十五年からシクラメンの生産を始めました。当時は千葉県での夏越しが難しいなど苦労が多かったそうですが、「(生育が)心配で、心配で、夜のハウスでシクラメンをじっと見ていた。」と語るほどの努力と優れた観察眼で、シクラメンの栽培技術を確立してゆきました。 しかし、どうしても夜温の高い気象条件での夏越しが難しく,耐暑性の系統選抜を始めたことから育種の道に入りました。持ち前の観察力で選抜と交配とを重ね、高温期でも生育を止めず、早期に出荷できる系統を作り上げました。品種特性も高橋さんのセンスが活きた商品性の高いもので、葉は小葉で枚数が多く、花は葉とのバランスが良いように大きすぎず、ふっくらとした美しい花形が特徴です。
また、昭和六十年頃から、シクラメンの商品性をより高くするために、オリジナル品種の育種にも力を入れるようになりました。代表的な品種としては、中輪系で刷け目の入る“パピヨン(パビリオン)“、F-1の”アルプ“シリーズ、強いフリンジの入った”プリマドンナ“シリーズなどがあります。いずれの品種も、それまでのシクラメンとは違った新しいタイプの品物で、かつ商品性も高く、常に注目をあつめています。
「いい花ができたよ!」と高橋さんが満面の笑みをたたえるとき、シクラメンの可能性がまたひとつ広がるのです。
頼もしいパートナー 高橋さんの活躍を支えてきた奥様は、生産技術のみならず育種に関しても知識と理解が深く、正に二人三脚で大栄花園を作り上げてきました。品質に関するセンスも抜群で、大勢のパートさんに葉組み等の管理を指導して品質管理を行っています。 数年前には後継者の康弘さんが就農しました。高橋さんはゆくゆくは生産を彼に任せ、自分は育種に専念するという夢を持っています。康弘さんも一人前になるべく勉強中ですが、「親父の肥培管理はいいかげんだ!」などと主張する頼もしい面もみせ、これに対し、高橋さんは「おれのいいかげんは好い加減だよ」と切り返します。 彼が好い加減が分かるようになる頃、高橋さんの夢が実現することとなるでしょう。
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| マルチ栽培読本(5) |
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着色フイルム
(1)グリーン(緑色)フイルム
| Aさん |
マルチフイルムも緑色や青色、茶褐色などいろいろの色彩のフイルムが出ていますね。それらの効用の違いを知りたいが、まず古くからあるグリーンフイルムつまり緑色のフイルムについてご説明願いたい。 |
| B博士 |
雑草抑制用として、除草剤混入フイルムは、地温は高くなるが、適用作物が限定されています。黒色フイルムは雑草を抑えるが、地温上昇は十分ではない。グリーンフイルムは地温上昇と雑草抑制を同時にねらったものです。 |
| Aさん |
グリーンフイルムは光をかなり通すので、地温上昇効果は分かりますが、雑草抑制はどうしてですか。 |
| B博士 |
可視光線は虹でも分かるように七色、それぞれの色の役割はかなり解明されています。青色光や赤色光は植物の生育増に強く働きますが、緑色光は働きが小さい。緑色顔料を混和したグリーンフイルムは青色光と赤色光を強く吸収する反面、緑色光をよく透します。それで雑草が抑えられるのです。しかし完全ではありません。 |
| Aさん |
完全でないというところを詳しく、実際面で重要ですから。 |
| B博士 |
グリーンフイルムといっても、色の濃淡、色合いなど、メーカーにより一様ではありませんが、除草効果や地温上昇に優れているといわれるKOグリーンを用いた試験では、雑草量が少ない秋冬期及び早春の除草効果は80%程で、除草用として有効です。しかし晩春期以降の雑草の多い条件では効力は十分とは言えません。
地温とくに日中地温についても触れておきます。グリーンフイルムの地温上昇効果は透明と黒色フイルムの中間とされていますが、マルチ直後では、フイルム内面に水滴が付きにくいため、水滴が付着して光透過量が制限される透明フイルムより、一時、地温はむしろ高い。その期間は、温度が高い夏期では短いが、秋冬期とくにハウス・トンネルなどマルチフイルムが寒い外気に直接触れない条件では二ヶ月以上続き、生育を促進することが確かめられています。 |
| Aさん |
なるほど、以上のお話の地温上昇の特異性や除草効果から、グリーンフイルムは秋冬期から早春にかけて、特にハウス・トンネル栽培のマルチ資材として有効と言えますね。
春期でも雑草の少ない畑では有効ですね。 |
| B博士 |
その通りです。 |
(2)その他の着色フイルム
| Aさん |
紫系統や群青色、茶褐色などに着色したフイルムが最近出ておりますが、そのねらいや効果はどうなんですか。 |
| B博士 |
私も試験しておりませんので、よく分かりませんが、ねらいはグリーンフイルムと同様に、地温上昇と雑草抑制をねらったものでしょう。これらの色はグリーンのように光の波長の選択による雑草抑制ではなく、光の透過量を落とすことによって雑草を抑制する。一方、光透過の低下は地温上昇にはマイナスに働きます。ただし、グリーンと同様にフイルム内面に水滴が付きにくく、マルチ後しばらくは透明フイルムに近い地温を保つと思います。 |
| Aさん |
お話から判断すると、着色が濃いフイルムは雑草抑制には効果的であるが、地温上昇は十分でなく、色の淡いものは逆に地温上昇にはプラスで、雑草抑制にはマイナスに働くと考えてよいですね。 |
| B博士 |
そうだと思います。もう一つ着色フイルムに包括してよいか分かりませんが、紫色系統の赤外線マルチと言われるものがあります。平均可視光線の透過を抑え,熱線である赤外線を透すように作られ、光が弱まるハウス内のマルチとして効果が高いと言われています。私自身で試験をしていません。 |
(3)配色フイルム
| Aさん |
フイルムの両側を黒色にし、その中を透明にしたフイルムがありますが。その効果はどうなのですか。 |
| B博士 |
透明フイルムのマルチでは植え孔から外にあたる肩に至る部分に雑草が生えやすい。その部分を黒色にして雑草の発生を抑えるとともに、マルチ中央部の透明部分で地温を上げる。使われています。 |
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| 肩面ビニペット部のフイルム破れ |
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スーパーソーラーは5年以上続けるのが一般的ですが、3年ほどで肩面ビニペット部にフイルム破れを生じているハウスがある。その原因としては二つある。
一つは真夏の展張によるものである。スーパーソーラーは伸びにくいが、温度差によって伸び縮む。それは、夏と冬の間で100mに対し50cmぐらいである。屋根面に7m幅のフイルムを張ると、夏冬の間で3.5cmほどの伸び縮みが生まれる。僅かであるが、夏に強く張ると、冬の縮みにより、肩面ビニペット部に力がかかり、破れをおこす。イチゴやナスの栽培では夏の展張が多くなるが、基本的には真夏の展張を避けること、もし真夏に張る場合にはパンパンになるほど、強く張らないことが大切である。
もうひとつの原因はビニペット・スプリング挿入とマイカードリで起きる傷からによるものである。特にマイカードリの装着はフイルムに穴を開け易い。装着には気を使って欲しいが、ビニペット挿入部だけ幅10cmほどのフイルムと重ねて張ると、傷による心配は少ない。
重ね合わせるフイルムはPO系フイルムに限る。ビニールはPO系のフイルムと相性が悪いので、ビニールの使用は絶対に避けること。
また、マイカードリを使わず、ビニペットのスプリングに結びつけるなどの工夫も望まれる。
なお、肩面ビニペット部に破れを見つけた場合には、キリバリテープで補修すること、また強風時にハウス内に風を入れないことで当面の対策とする。 |
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