千葉県のいちご園芸
千葉県農業総合研究センター
暖地園芸研究所
河名 利幸
近年、特に今年度は多くの野菜価格が低迷する中で、順調に価格の維持安定および栽培面積が微増している品目の一つが「いちご」です。
千葉県に於けるイチゴの栽培面積は、それまで減少していた平成七年度の225haを境に増加に転じ、平成十一年度では233haまで回復、その後もさらに増加していると思われます。
販売形態も平成十二年(県園芸農産課調べ)では、市場出荷が60%、観光いちご狩り(直売も含む)が22%、直売のみが18%と観光・直売の比率が高くなっています。特に、アクアライン開通後の観光客増加に伴う県南地域のいちご狩り増加、東葛飾、印旛地域ニュータウン開発など、大消費地に隣接する地域の直売の増加が目立っています。
品種では、「女峰」、「とよのか」から、新しい品種への転換が進み、平成十二年の作付面積比率では、「とちおとめ」35%、「女峰」27%、「アイベリー」10%,他に「章姫」、「さちのか」、「とよのか」、「アスカルビー」といった多彩な品種構成となっています。他にも「ふさのか」、「春訪」といった千葉県育成の品種の作付けも広がりつつあります。「女峰」は減少傾向にありますが、市場出荷、観光、直売の全場面でまだ利用されています。
いちご出荷形態と品種
1.市場出荷
今後、国内の産地間競合だけでなく、増加する輸入品との競合も課題となってくる販売形態です。市場出荷の場合、最近は食味が重要視されるようになりましたが、他産地、輸入品との競合となれば、依然として、店持ち性、品質の向上、輸送性が要求されます。輸入品においても、輸送時間の短縮、輸送技術の向上により、国内産とほとんど変わらない状態で販売されている光景を目にします。
市場出荷では、「とちおとめ」を主に「さちのか」、「アスカルビー」といった品種が作付けされていますが、これらの品種は各々の課題を持っています。それらの課題を克服しながら収量、品質を向上させて販売していく方向のほかに、今後は産地間競合を避け、産地独自のブランドによる差別化商品とする方向も販売方法の一つとして考えるべきです。
2.観光いちご狩り・直売
観光いちご狩り・直売は、今後も増加する販売形態と思われます。作付け品種は「とちおとめ」、「章姫」、「さちのか」、「ふさの香」といった食味を重視した構成となっています。現在は、店頭において多様な品種が販売されるようになり、いちご狩り園、直売所でも特定の品種を要望するお客が多くなったようです。
いちご狩りに向くと考えられる品種は、収量性が高く、大果、良食味で、特に「女峰」のように中休みのない連続収量性の強いものが適し、品種構成も収穫ピークの分散を図るうえで数種の品種を揃える必要があります。
但し、県南地域の観光いちご狩りは、観光客のピークが二〜三月の、特にその連休や土・日に集中する傾向が続いております。その一時期だけを考えれば、品種の選定および組み合わせだけでピーク時の不足分を補うことは不可能で、現実には、いちご狩り園の面積はまだ増加の余地はあると考えられます。
しかし、そのほかの時期の余剰をどう処理、販売するかと言う問題も生じます。現在の「いちご狩り+花摘み」の体系を、二、三月中心の花摘み以外の品目と体系化し、観光客の分散を図る必要性も生じてきます。その上で発生する余剰生産物については、市場出荷、直売に向けることとなり、それによって作付けされる品種の構成、面積も決まります。
直売は、大消費地に近い地域や街道沿いでは、さらに延びる形態と思われます。品種も人気の高い「とちおとめ」、「章姫」、「さちのか」、「ふさの香」といった品種となります。直売では、味の良い新鮮ないちごが要求され、輸送性、店持ち性に関してはあまり重要視されることはありません。食味の良い品種が導入の対象となり、食味が良ければ固定客の確保は容易と考えられます。
また、東庄町で栽培される「愛ベリー」のように、その地域でしか食べられない、入手できないといった地域特産物的な特徴を持たせることも大切です。
最近、各方面から様々な新品種が発表され、店頭を賑わしていますが、その評価はまだ定まっていないのが実情です。そのため,他県育成のものは入手不可能なものもありますが、入手可能なものでも、その導入に当っては、食味、品質等の特性を十分に検討したうえで、導入の是非を判断し、その特性を生かした栽培および販売を行っていくべきでしょう。市場出荷に向かない品種でも、直売やいちご狩りには最適といった品種が多くみられます。
現在、消費者に好まれる品種の多くは、「女峰」で問題になった炭そ病だけでなく、萎黄病の発生が懸念されています。今後は、いちごにとって致命的な病気である炭そ病、萎黄病に対する抵抗性を有しない品種への対策が重要なポイントになります。
これら病害対策として、高設育苗(底面吸水)方法の開発や苗生産の分業化(リレー苗)の導入等が検討され、実現化が進んでいます。
高設底面吸水育苗は、山武農業改良普及センターにより開発され、灌水方法の改善による炭そ病の回避および高設による作業負担の軽減が図られた育苗方法で、他地域での導入が徐々に進んでいます。
苗生産の分業化は、安房いちご苗委託組合の取り組みにより、北海道への委託が軌道に乗りつつあります。無病の原種を送り、無病な土地で苗増殖を行うことで、健全な苗の安定確保が可能となります。これらの活動の結果、これまで炭そ病により健全苗の確保に苦労していたものが、病害に弱い品種でも健全苗を確保できます。
苗生産委託法の確立は、自家育苗を行う他の品種に対して余裕のある綿密な管理が可能となるほか、苗の全量購入を前提としたいちご栽培が可能となり、栽培品目転換による新規参入も容易となる。既存のいちご生産者でも、育苗に要した時間、労力を別の栽培品目の管理に当てることができます。
今後も、新しい品種は次々と登場してくることは間違いないと考えられます。その中で、それぞれの経営に最も適したものを選択し、適切に栽培、販売する、そのための情報収集を常に心掛けることが大切です。
なお、いちごの品種は、種苗法により育成者の権利が保護されています。栽培に当っては、育成者の権利を尊重し、法の遵守に十分心掛けてください。
山田町長岡
赤塚 安夫さんのニラ栽培
香取農業普及センター
高橋 大樹
山田町のニラ栽培
この地域のニラ栽培は大きくハウス栽培、トンネル栽培、露地栽培に分けられます。どの栽培も、三月中・下旬に播種、六月下旬〜七月に定植を行うのが一般的です。
ハウス栽培は、定植後、年内一杯株養成をして、年明けから収穫開始となります。収穫回数は人によって様々ですが、年明けから四月頃までに四回、その後、夏期間は株養成を再び行って、十一〜十二月に二回ほど収穫と、年間でも価格の比較的良い時期をねらって出荷できる作型と言えます。
JAニラ部会では、ハウス栽培の中でも、特に一番刈りと二番刈りのニラを「美味ニラ」のブランドで販売しています。一年で味が最も良い、この時期の「美味ニラ」は葉が軟らかく、甘みも高いことから、市場でも大変に高い評価を受けています。
JAかとり園芸部山田支部ニラ部会
JAかとりは平成十三年に香取郡内の五つのJAが合併してできた広域JAです。ニラ部会は、このうち旧JA千葉山田町に所属していた生産部会です。ニラ栽培の歴史は古く、昭和三十八年から行われてきました。現在、部会員は約八十名、作付け面積は約80haに及んでいます。
山田町のニラ栽培は、トンネル・露地栽培が主流でしたが、平成三年からパイプハウスの導入が進み、現在では、JAニラ部会全体でのハウス面積は7haに広がっています。
赤塚さんの経営と抱負
赤塚さんは周年栽培によるニラの専作農家です。経営規模は露地80a、パイプハウス40aと、ここ数年でハウス面積を増やしてきました。現在、家族三人とパート一人の労働力で頑張っています。
赤塚さんは、露地・トンネル栽培主体の経営でしたが、良品生産、作業効率の向上を目的に、平成九年からパイプハウス導入を始めました。そのため「美味ニラ」の出荷も積極的にでき、収益の向上に寄与しています。
最近は、通常では定植の翌年初めから収穫開始をする新ニラを、定植時期を早めて、年内(十一〜十二月)から収穫できるように工夫を始めています。この時期はニラが休眠に入り、一株当りの収量が減少するため、二年目の古株を収穫するのが一般的です。古株であることから品質はやや低下しますが、市場への入荷量が減少するため、比較的高い価格で取引される時期であります。
この時期に良品質な新ニラを出荷しよう、そのためにハウス栽培の利点を活かそうというのが赤塚さんの新しい挑戦で,品種や植え付け時期の検討を進めています。
ニラ経営も、近年は他の野菜と同様に、価格に悩まされることが多くなりました。今後は、足腰の強い経営の確立が望まれます。
赤塚さんも、新技術の工夫・確立に加えて、販売戦略や作業の省力化など、経営に有利なことを積極的に取り入れ、品質のより高い、美味しいニラの生産を目指しています。
ニラはビタミンA、カロチン、カルシュウムを多く含む健康食品です。独特な香をもち、その成分には殺菌作用や消化を助ける作用があります。臭みを消す働きもあるので、肉や魚と組み合わせて使われます。中国料理には欠かせないが、和風料理にも、卵とじ、煮物、油炒め、雑炊、スープなどに広く利用されています。
九十九里町作田
九十九里観葉園 作田 衛さんの緑と花の鉢物経営
山武農業改良普及センター
果樹花き科
経営の概要と立地
作田さんは、経営面積10,000m
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(ガラス温室・スーパーソーラー等ハウス12棟・露地)で鉢物栽培を行っています。労働力は、経営主の衛さんご夫婦と長男と次男、従業員二名、パート二名です。
作田さんの施設は、九十九里浜に近く、温暖な気候と平坦な地形に恵まれ、周辺も施設園芸が盛んです。
緑と花の鉢物経営
作田さんの経営部門は
観葉植物:昭和37年に千葉県でいち早く観葉植物の生産を始め、ポトス・シダ・アナナスなどを中心に栽培し、現在は、ランタナや宿根草など需要の多い品目を組み合わせて生産しています。
コニファー:海外から導入したゴールドクレストをはじめ、各品種のコニファーを栽培し、露地と施設を効率よく利用しています。
鉢花:平成8年から後継者の就農にあたり、エラチオールペゴニアの周年栽培を行っています。
リース(貸し鉢):レストランやオフィスなどの貸し鉢や装飾をしています。消費動向をより早くつかむことができ、各生産部門に反映されています。
時代を先取りした鉢物部門が、鉢物の幅広い用途に合わせた販売戦略となり、市場出荷、契約栽培などへ販売先の多様化につながっています。
栽培の工夫と省力技術
水の確保と水質の維持、潅水方法:海岸に近いために地下水の塩分が多い。そのため、6mの浅井戸4本を連結し、鉢花用は雨水タンクを設けて、貯水と水質を維持しています。頭上潅水・底面潅水の半自動化がされ、省力化を図っています。
繁殖技術の確立:品目に合った用土、温度、湿度、光を研究し、繁殖方法を確立しています。挿し木は、ほぼ周年で実施し、苗の自給割合を高め、品目により実生繁殖を行っています。
鉢上げ台や台車などの利用:苗から出荷鉢への鉢上げまで一貫作業を実施し、鉢上げ台や各種台車の利用により、作業の省力化を図り、無理のない作業姿勢の確保に努めています。
後継者の就農が部門経営の開始
長男、次男が平成7・8年に就農し、観葉専作から部門分担を始めました。経営主夫婦がコニファーと全体の総括、長男が観葉植物とリース部門、次男が鉢花部門を担当しています。
分担制を導入したのは、各人の経営者能力を高めるためとのことです。
就農の動機について、長男は、一度は就職したが、父と参加した海外研修(コニファー等)をきっかけに、次男は園芸専門学校卒業後、県農業試験場の研修で知った鉢花に魅力を感じ、就農を決めました。さらに自分の経営部門を分担できることが、就農の一番の動機になったとのことです。
後継者と描く鉢物経営
平成11年に法人化をして、パソコンによる経営管理や週休二日制など家族が役員として「九十九里観葉園」を伸ばしています。
これからは、現在ある施設を更に有効に利用し、市場出荷だけでなく、多様な販売を図ること。消費者に提案できる新品目(花木・宿根草・グランドカバー等)の導入など、様々な鉢物への要望に対応できる農園を目指し、生産販売体系を確立することを目標にしています。
UVソーラー及びサンソフター
UVソーラーは虫害回避をねらった紫外線カットのスーパーソーラー姉妹品。ミツバチ使用作物やナス栽培では使用できない。マルハナバチ利用ができること(ただしハチの種類により適応性の違いがあるので事前チェックは必要)、また、多くの野菜花に適応性のあることが分かり、急速に利用が広がっている。紫外線をよく通すスーパーソーラーやソフトソーラーに比べ、ハウス内のカーテン、ポリテープなどの各種資材の劣化は起こり難い。
サンソフターはみかど化工(株)がUVソーラー内での使用を絶対条件に紹介している、布製の非蓄熱性の白色のカーテン材。ハウス内の気温抑制はすばらしい。紫外線に弱い欠点をもつが、UVソーラーハウス内では劣化が少なく、使用者からはハウスの高温対策として抜群の賛辞が贈られている。
サンソフターは反射力が大きいため、カーテン被覆下で明るく、"光があって温度が低い"理想的な環境になる。しかし遮光率は50%であるので、使用時間は日中に限られる。
しかも軽く、サラサラして、開閉作業が楽で、収束性も抜群。収束時もコンパクトで陰が少ない。
近年は異常に暑い夏が多く、作物にも作業にも困る。UVソーラーとサンソフターとの組み合わせの検討をお薦めしたい。
ハウスの洗浄が楽にできる
スーパーソーラーを奇麗に洗い流してくれる雪が今年は降らなかった。展張後3年ぐらいで一回洗うと、スーパーソーラーは新品のように奇麗になる。しっとりとした春雨の頃はハウス洗浄に最も良い時期である。
(株)槍木(うつぎ)産業(山武町)がフイルムを簡単に短時間で洗浄できる「あらいぐま」の新製品を発売している。柔軟性のブラシをハウスに載せ、それをハウスの両側から支え、水道水や動噴などで水をかけながら、ブラシを小型エンジンで回転させて洗浄する。小型エンジンは軽い背負式。10a当りの作業時間はパイプハウスでは一時間半ぐらいと効率的である。
マルチ栽培読本(6)
反射フイルム
(1)アルミ蒸着フイルム
Aさん
白黒ダブルやアルミ蒸着などは反射フイルムと呼ばれているようですが、それらフイルムの作用をお話願いたい。
B博士
反射力を活用したもので、その代表がアルミ蒸着フイルムです。反射力を高めるように、フイルムにアルミを蒸着させ、その表面にアルミ層を保護するため、透明な樹脂フイルムを貼り合わせたフイルムです。強い反射力で、光合成を高め、果実や花の着色増進や熟期の促進に利用されています。
Aさん
遮光力が強いため、地温抑制、雑草抑制に役たち、また有翅アブラムシなど害虫忌避効果も高いと聞きます。
B博士
その通りです。ただし、価格が高いことと、反射力が強すぎ、まぶしく、高齢者に向かないなどの難点もあります。それを補う白黒ダブルの新製品が生まれ、ハウス栽培のトマトや抑制メロンなどへの利用が進んでいます。後述します。
(2)白黒ダブル・銀黒ダブルフイルム
Aさん
白黒ダブルの話が出ましたが、古くから人気の高いフイルムですね。表面が白で,裏面が黒の二層のフイルム、銀黒は表面が銀色になるよう表層にアルミ粉末が混入されているわけですね。
B博士
白黒は反射力が強く、光の透過もないため地温抑制力が高い。透明あるいは黒マルチに比べ、真夏には深さ5cmの最高地温で5〜6℃、最低地温で1〜2℃低い。そのため夏に栽培する野菜に広く利用されています。
Aさん
白黒に小さな孔が沢山開けてフイルムもありますね。
B博士
白黒サマーと呼ばれています。全面に開けた小さな孔は通気孔の役目を果たし、白黒ダブルより地温が下がります。通気により作物の根が広く張り、生育の健全化に役立ち、潅漑水の一部が通気孔を通り、地中に浸透することなどから、ハウス栽培で利用されています。
Aさん
さきほど白黒ダブルの新製品の話がでましたが。
B博士
今までの製品も反射による補光を利用して、ハウスのトマトや花栽培に使われていますが、新製品は厚手にして反射力をより高めたもので、積極的に補光し、地温もより下がります。抑制メロンでは収量・品質の向上に役立つと喜ばれ、また抑制トマト栽培では夏期高温時の青枯病抑止の点で効果的です。ただ値段は少し高いようですので、二作以上の使用が経済的です。
Aさん
白黒はいろいろの高い効果のあること分かりましたが、反射力が高いのに、害虫忌避効果はあまり期待できないと聞いていますが。
B博士
紫外線の反射力が弱いからです。それを補うものが銀黒ダブルや銀黒サマーです。紫外線を反射して有翅アブラムシなど害虫の忌避効果があります。白黒に比較して地温の抑制力はやや低いですが、透明や黒マルチに比べると最高地温で4℃ほど低下するので、夏栽培には好適です。
Aさん
表面が銀色のマルチは沢山の種類がありますね、全体的にシルバーものと呼ばれているようですが、銀黒もその一種類と言えますね。
B博士
そう考えてもよいでしょう。と言うのはシルバーものは、害虫忌避を主目的として開発されたからです。ただ、銀黒は地温の低下もねらっています。
(3)コーテーコンビフイルム
Aさん
フイルムの一部が白黒の二層,一部を透明にしたフイルムがありますね。
B博士
コーテーコンビフイルムと呼ばれています。例えば、スイカ、露地メロンを対象に、植付部分を透明帯にして、初期成育の増進をねらい、低温化する白黒帯で生育中期以降の根の活性を高めるように、白黒帯と透明帯の配置がされています。スイカでは増収,増糖に有効であることが実証されています。特に夏に地温が上がりやすい砂の多い土壌の栽培には効果的です。利用を薦めたいマルチです。
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