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最近の気象変化の特徴と気象情報の農業利用
井上君夫

 本年の夏の天気は西日本では暑かったが、関東ではやや暑かったものの平年並みに近かった。今年の特徴は台風の発生が早く、特に台風21号の被害が大きかったことである。台風そのものの強さが大きかったことに加え、千葉県は進路の東側に位置したことから被害が増大した。
 年間を通しての天候、すなわち日本の四季はシベリア気団、オホーツク海気団、揚子江気団、赤道気団、小笠原気団によって演出される。性質の異なる気団のぶっつかりあったところに前線が出来る。千葉県の夏の作物栽培に強く影響するのは小笠原気団とオホーツク海気団である。前者は暑さをもたらすが、後者は冷たい北東風、つまりヤマセをもたらす。テレビなどで天気図を見るときには、これら気団の強さ、位置などに関心をもちたい。
 他方、世界的にみると、地域的ではあるが、大洪水、大旱魃などの異常気象が発生している。
 油断ができない。また平年気温があがりつつある。日本でも一九六十〜八十年まで安定していたが、九十年以降高温化している。高温化は人間が消費する石化エネルギーが最大の原因と考えられており、気象庁は最近の異常気象は炭酸ガス等の温暖化ガスに起因していると発表した。
 エルニーニョが異常気象の一因と考えられているが、地球の約六割を占める海洋が大気に及ぼす影響については殆んど解明されていない。
 このような異常気象は農業全般に影響を及ぼしている。都市型の異常降雨や異常高温、作物の高温障害、病害虫の越冬や北上が頻繁に聞かれるようになった。
 毎日の天候は農業生産の基本であり、買うものである(積極的利用)という考えもある。
 それだけに栽培管理や農作業、出荷調整に欠かせない気象情報の活用が大切で、そのためには自分のところの天候を熟知するとともに、天気予報をよく解釈できるように努めなければならない。その上にたって、ハウスやマルチなどフイルム資材を上手に利用することが大切である。フイルム資材は多くの種類が開発されている。目的に応じた種類の選択、活用の勉強が不可欠である。フイルム資材の特性と利用技術について詳しい説明がなされた。


 
食の安全からみた農薬と遺伝子組み換え作物
野口勝可

 農薬は農業生産に欠かせないが、生産者にも食する人にも安全なものでなければならない。そのために農薬登録の制度があり、各国とも実施している。日本の農薬取締りは世界でも最も厳しいとされている。
 近年、外国からの輸入野菜増えており、その中に農薬の残留しているものがあり、問題になっているが、最近は国内生産でも無登録農薬の利用がしてきされている。ダイホルタンやナフサクなどである。
 農薬登録は農薬メーカーや輸入業者が農水省管轄下の農薬検査所に、農薬の毒性検定、人・家畜への安全性、土壌・水など環境への安全性、魚介類・藻類など有用動植物への影響、農作物への残留性等の調査書類を提出、登録の申請をする。農水省はそれらをチェックし、安全使用基準、適正使用基準を策定、告示する。さらに食品衛生法のもとに厚生労働省が、加えて環境省ガ、チェックして、始めて登録され、販売に移される。以上で分かるように登録農薬は安全性について十分な措置がとられている。しかし申請は莫大な費用を要する。
 そのため農薬メーカーなどは面積の小さいマイナークロップに対しては登録をとらないことがあり、問題として残されている。
 無登録農薬の利用については、現在は、製造メーカーや販売業者が罰せられ、使用者の農家は罰せられないが、使用者罰則など、農薬取締法の改正の動きがある。
 登録された薬剤を使用基準にしたがって利用するのが基本であり、それが生産者の安心、食の安全につながる。
 食の安全性の面で、農薬利用とともに心配されているのが遺伝子組み換え作物である。生物の生命活動のキーはタンパク質であり、タンパク質の設計図が遺伝子である。すべての生物は細胞の中に遺伝子をもっており、その遺伝子を種の壁を越えて組み入れる技術が遺伝子組み替え技術、それで出来た作物が遺伝子組み換え作物である。遺伝子組み換えといっても、遺伝子を少数いれるだけなので、もとの作物の特性を変えることなく改良できること、また従来の交配育種は種内でしか交配出来なかったが、遺伝子組み換え技術では種に関係なく組み替えでき、品種改良の可能性が画期的に広がる特徴を持っている。
 遺伝子組み換え技術は作物の品種改良ばかりでなく、医療分野でも使われている。現在、遺伝子組み換え技術で、除草剤に強い作物や、虫害を防ぐトウモロコシ等が開発され、既に大豆、トウモロコシ、菜種、バレイショ、綿等の作物で商品化、大豆と菜種は食用油等に、トウモロコシは家畜の飼料に使われている。
 安全性については遺伝子組み換えの前と後で、作物の成分や毒性などの調査と共に、意図しない機能が現れないかを調べて、問題の無いものだけが、商品化されている。日本でも研究は進んでおり、試験は閉鎖系温室や隔離圃場を用いて行われ、食品、飼料としての安全性や導入タンパク質の安全性が厳しく審査されている。
 遺伝子組み換えは新しい技術であるため、情報が不足しており、それが遺伝子組み換え食品についての不安につながっているのが現状かと思う。(文責中山)


 
暑い夏と対策資材
 
猛暑が珍しくなくなった
 この十年、暑い夏が多く,特に平成六年、十一年、十三年(昨年)は暑く、異常気象とか記録的な猛暑と言われた。今年の暑さは、それほどではなかったという方もいるが、表-1に示すように、過去の猛暑に劣らない暑さであった。
 暑さの原因としては、地球温暖化の関与が大きいと言われる。つまり工場や自動車などから排出される温室効果ガスになる二酸化炭素などの増加によると考えられている。したがって猛暑はこれからも起こり、珍しくなくなったと考えてよい。

ハウスの高温対策資材
  • ソフトソーラー、スーパーソーラーの内側を梨地化した外張りフイルム。夏場には太陽光を散乱光にするため、涼しく感じる。作物の日焼けも防げる。冬場のハウス密閉条件では、フイルム結露との関係から、スーパーソーラーと変わらない透明性をもち、光不足,光質低下の心配はない。急速に普及している。
  • サンソフター、布製の白色非蓄熱性のカーテン材で、ハウス内の気温抑制は素晴らしいものがあり、高温対策として抜群の賛辞が送られている。しかも軽い。光遮光率は約50%である。ただ紫外線に弱い欠点を持つので、UVソーラーハウスの使用に限られる。
  • マルチ資材、夏場に栽培する条件のマルチとしては、白黒ダブルマルチなり、それに小さな通気孔を全面に加工した白黒サマーマルチが高地温障害を防ぐ。白黒サマーマルチは白黒ダブルマルチより2℃ほど地温が低い。銀黒ダブルマルチにもサマーマルチがある。
    フイルムを厚くし耐久性を上げ、光反射性を大幅にアップしたミカクールはさらに地温が下がる。抑制メロンのように真夏に定植、秋期に収穫する作物に適する。やや高価であるが、丈夫であるので二作ぐらいに使うようにしたい。
表-1 真夏日と熱帯夜の日数
  千葉(測候所)
真夏日 熱帯夜
銚子(気象台)
真夏日 熱帯夜
平成14年 44日 31日 17日 6日
平成13年 44日 19日 14日 3日
平成11年 41日 33日 29日 9日
平成6年 50日 33日 27日 12日
平成 27日 11日 7日 2日


 
八日市場市 柏熊園芸
柏熊 幸俊さんの「鉢物経営はシステムづくり」
海匝農業改良普及センター
伊東直美
1.地域の概要
 海匝地域は、温暖な気候を活かした施設園芸が盛んです。花き生産は、県下第二位の粗生産額で、切り花・観葉・鉢花・鉢植木・花壇苗・洋ランと多様な品目で、全国の花き市場に出荷しています。生産者はおよそ220戸、約52haの施設と露地で栽培されています。

2.鉢物生産への取り組み
 高校時代より鉢物生産に興味を持ち、試作と販売にも挑戦されていたそうです。昭和四十五年に72坪のハウスからスタートして,観葉植物を中心に、鉢物・洋ランと様々な品目にも積極的に取り組み、効率的な鉢物経営を目指し、現在は観葉植物主体に施設と露地栽培を組み合わせた鉢物生産をしています。

3.経営の概要
 施設面積:ガラス温室600坪、ハウス1200坪、(スーパーソーラー)
 露地:20a
 労働力:家族2人、雇用2人
 栽培品目:パピルス、ゴールドクレスト、ゲッキツ、シマトネリコ、その他
 鉢サイズ:4〜13号
 年間生産量:4万鉢
 栽培期間:1〜3年

4.鉢物生産の特徴
  1. 付加価値の高い商品づくり
     花きの大量生産販売の中でも、市場からは、新しい鉢物、見かけなくなった鉢物が要求されます。
     商品開発したパピルスは自然を感じる鉢物として国内でも珍しい品目になりました。鉢物として栽培するには失敗を繰り返し取り組んだ成果だそうです。また、ゴールドクレストはトピアリーに仕立てて注文のある人気商品になっています。さらに、シマトネリコは露地と施設を活かした省力的な品目です。生産者が見えるオリジナルな鉢物を生産しています。
  2. 生産と集出荷システムの整備
     鉢物は鉢の移動が重要な作業です。そのために、鉢上げも含め、面倒な作業をいかに省力するかを考え、スムーズに作業の出来る農機具を工夫したり、台車や運搬機を最大限に利用しています。又、作業の流れをよくするために、効率よく栽培体系を組み、施設内外を平らにし、道路を舗装にしています。鉢物は個人出荷で庭先集荷です。市場のトラックが早く楽に集荷できるようになっており、農作業も集出荷もしやすい農場に整備されています。
     1800坪の施設を4人(雇用含む)で省力かつ生産量を上げるために、農場全体及び周辺道路を活かし、数年にわたり整備をされました。このシステムがすべてを可能にしています。

5.これからの鉢物生産
 「大空の上は爽快で、安全に楽しく、広い視野が自分の世界を無限にします。」十七年前から、趣味で軽量動力飛行機・ウルトラライトプレーンの免許と飛行場と飛行機を仲間ともっています。休日を利用し楽しむ姿は少年のような勇士です。それでも、「常に着陸の危機を考えて飛ぶ」とのことです。このことは、鉢物経営の中でも、広い視野で様々な角度から、現在の花き業界を分析する鋭い視点になっています。
 平成十四年十月の台風は様々な教訓を残しました。ハウスは被覆材の強度と骨組みのバランスなど問題がありました。今、台風に強いパイプハウスを検討しているそうです。
 今後は、「大型市場の中でも生産者が見える個性的な鉢物」、「消費者が楽しめる鉢物」に取り組んでいきたいと考えています。
 仕事を楽しみ、趣味をもち、家族や仲間を大切にしながら、自分の時間を多く持てるような経営を目指しています。

 
台風21号のお見舞いと被害について
 
 十月一日に台風21号が襲来、太平洋沿岸地域から北総台地にわたり大きな被害を受けました。心からお見舞い申し上げます。
 記録的な最大瞬間風速52.2m/s
 今回の台風21号は九月二十七日にマリアナ諸島付近で発生、北進し、十月一日の二十時に三浦半島通過、東京を通り、早い速度で、二十一時に柏市付近、二日零時には宮城県に達しています。東京通過時の気圧は960ヘクトパスカル、暴風圏の最大風速は35m/sです。
 台風の風は時計回り逆に渦を巻いて吹き付けます。そのため台風の中心(目)の東側は台風の進む方向と風の方向とが一致して加速され強風になります。台風の速度が速いほど風は強まります。そのため東側に位置する千葉県は南からの暴風をまともに受けました。
 しかし台風の目に近い我孫子など県西ではやや強い風の程度にとどまりました。表-1が県内の気象台・測候所における風速を示したものです。
 一日の十六時頃から強風が吹き始め,翌二日の四時ごろまで約12時間吹き荒れました。
 最大瞬間風速と、その時刻、風向きは、館山では十九時十八分の38.9m/s・東南東風、勝浦では二十時三十四分の50.5m/s・南西風、千葉では二十一時七分の40.6m/s・西南西風、銚子では二十一時に十分の52.2m/s南風です。銚子と勝浦の50m/sを越える最大瞬間風速は記録的な数値です。
 勝浦周辺より銚子周辺で被害が甚大であったのは、暴風時間の長短の違いによることが表-1から分かります。海からやや離れた八街市など北総台地で被害の大きかったことも銚子と千葉の数値を見れば理解できます。
 銚子気象台で観測された最大瞬間風速の最大値は、長い間、昭和四十六年九月八日台風の49m/sでしたが、平成八年九月二十二日の台風17号が51.9m/sを記録し、太平洋沿岸から利根川流域に大きな被害をもたらしましたが、今回は、それを上回る記録的な数値です。
 雨量は50〜100mmの所が多かったですが、安房地域は100mm以上、大多喜では115mmでした。かなりの雨でしたが、暴風がかなり長時間であったこともあり、吹き返しなどにより潮害を受けた地域がかなりありました。

台風21号の風速と雨量
気象台
測候所
など
時刻別最大風速 m/s 最大瞬間
風速
m/s
その時刻
時・分
その時の
風向き
総雨量
mm
10月1日2日
16時 17 18 19 20 21 22 23 24 1時 4
銚子 10 15 20 23 23 28 28 19 14 14 9 52.2 21:20 72.5
勝浦 5 8 9 11 21 26 17 7 5 17 4 50.5 20:34 南西 106
館山 10 12 12 18 18 13 15 8 9 7 5 38.9 19:18 東南東 90.5
千葉 8 17 16 18 22 26 17 13 12 13 11 40.6 21:07 西南西 92.5
我孫市 3 3 4 6 6 3 4 4 5 4 1 - - - -



ハウス被害の状況
 ハウスの被害の状況としては、ハウスの転倒・倒壊、パイプハウスの変形、パイプの折れ曲がり、妻面扉の崩壊、フイルムの剥がれ・切損、天窓損傷などがみられました。特に風が強かった九十九里沿岸の北部地域と八街市など北総地域で目立ちました。
 しかし平成七年の台風12号、同八年台風17号で調査した時より、被害が少なくなったような印象を受けました。平成七年、八年に調査した被害と対策ハプラカル特報及び特報2に紹介しています。その特報を要望される方はみかど化工(株)に連絡して下さい。
  1. ハウスの転倒・倒壊
     鉄骨連棟ハウスの倒壊はほとんど無かったが、古いハウスの中には倒壊しているものが見られました。連棟ハウスの転倒・倒壊は基礎の浮き上がりから始まります。したがって大きさと重さが十分なコンクリート基礎にすることが肝腎です。特に谷部中柱には大きな浮き上げ力が働きますので、谷部中柱の基礎を十分にすることが大切です。
     パイプハウスでは根がらみ(地獄埋設)の不備による場合が多いので、根がらみを深く密にすることが基本です。またダブルキャチなどの二重パイプの補強構造が県北では一般的になってきていますが、とられていない地域もあります。特にパイプハウスが並列している場合には、外側のハウスが風を最も強く受けます。したがって最も外側のハウスは補強構造に加えて、筋交いをきちんと付ける必要があります。
  2. パイプハウスの変形・パイプの折れ曲がり
    原因の一つは筋交いの欠如です。もう一つは細いパイプのためです。最近は径六分や七分のものは殆んど無くなりましたが、径25ミリのインチパイプは必要です。インチパイプより太いパイプで、パイプ間隔を広げているハウスも見られます。
  3. フイルム剥がれ・切損
     鉄骨ハウスではビスなどが抜け、ビニペットが剥離ことによるものがあります。最近は被覆スプリングが普及し,錆びによる脱落ということは減りましたが、スプリングをビニペット内にきちんと入れないことによる脱落があります。スプリングの末端が浮いていると、風圧を受けたフイルムの張力によりスプリングが弾かれ、脱落の原因になります。
     これらビニペットやスプリングの脱落はそのままフイルムの剥がれにつながります。
  4. フイルムの張り方によるフイルム切損
     スーパーソーラーは伸び縮みは少ないが、暑い夏と寒い冬の間で、100mに対し50cmぐらいの伸び縮みが生じます。屋根に7m幅のスーパーソーラーを張ると、夏・冬の間で3.5cmぐらいの伸び縮みが生まれます。僅かですが、暑い夏に強くパンパンに張ると、冬の縮みにより、フイルムには肩面ビニペット部に上に引っ張る力が働き、ビニペット部のフイルムに亀裂が入ります。展張3年ぐらいから生じやすくなり、暴風の場合には切れます。
     三年以上経過したフイルムについては、常日頃チェックし、亀裂が見えたらキリバリテープで補修してください。夏場の展張は避けることが大切、どうしても張る場合にはパンパンに張らないようにして下さい。
     最近は100m近い長いパイプハウスがあります。展張の手間を考え、長い54mのフイルムを一面に張るのが大部分です。長いハウスではビニペットで三つか四つに区分して張るのが安全です。台風が多い南九州では妻面から側面にかけてネットを張って暴風害防ぐハウスが見られます。
  5. その他
    天窓の破損によるフイルムの切損のハウスがありました。換気扇や間口扉などにも常日頃チェックしておくことが大切。台風襲来とあわてても間に合いません。

当社の全てのフィルムは、農作物栽培現場におけるフィルム劣化促進作用を軽減するために、特許第2138850号に基づいた特殊配合を施してあります。 Copyright Mikado Chemical M.F.G Co. All Rights Reserved.
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