(7) 植物の種類 (
NO39「自分だけの品種を作ってみよう!」(1)の続き)
何のことかさっぱり分かりませんね。新法で導入された規定で、育成者の権利を幅広く保護する観点から加えられました。登録申請時に必要とする要件ではありませんが、後日利害関係者と紛争の火種になりかねない事柄です。育種開始時にきちっとしておくべきことです。要は、現在種苗登録されている品種のごく一部の特性だけを変えた品種は、親品種の育成者権を侵害しますよという忠告です。
これに該当する育種法は、突然変異、戻し交雑など四手法が明確に規定されています。
一番多い例は、ある赤い花色の登録品種を栽培している中で、色だけが桃色の株が見つかった場合でしょう。種苗法上は上述の条件を満たしていれば登録可能ですが、その権利を行使しようとするとき、赤い花色の登録品種の権利を持つ人と許諾契約が必要になってきます。断りなしに栽培、販売してはいけません。これとは別に、栄養系の品種では種苗購入時に、その品種からの枝変わりが出たときの報告義務の様な、民法上の栽培許諾契約取り決めが必ずあります。そのような場合は、その契約内容で先ず規制を受けます。
(8)契約内容との整合性
これも登録申請時に必要とする要件ではありません。種苗法では基本的には、新しい品種の育成を助長し、農業分野での生産活動に寄与する観点から、一部を除いて自家増殖、その種苗を品種育成に用いることを認めています。しかし、栽培許諾契約取り決めには多くの場合、その品種を交配などに用いてはいけない旨の条文も必ず入っています。そのような場合も、その契約内容で先ず規制を受けます。民事上の契約内容が、種苗法の上に被さってきますので注意して下さい。
4.種苗登録の申請と登録
(1) 出願手続き
出願には、あらかじめ定められた書式(品種登録願)に従い、必要事項の記入、不要項目の抹消、その出願品種の育成経過、特性等を記入します。インターネットで、その植物の申請のための関係書類一式を入手できます。さらに植物体の特性値のデーター等を記載する書式(説明書)にもれなく記入し、植物の写真と共に四万七千二百円分の収入印紙を貼付けして種苗課に申請します。
この部分の記載方法、対照品種の選定・栽培、データーの取り方、特性値の階級分け等はかなり煩雑ですので、普及センター等に相談してみて下さい。
また出願時に記載した品種名の変更は、出願者からは認められませんので、よく調査し(特許協会などで事前検索してもらうと良いが、かなり経費がかかります)、十分に検討した上で命名して下さい。ただし、後日、種苗課による品種名の適格性の審査の結果、職権で名称変更命令が出されることは想定されます。一定期間中に別の名称を届け出ます。
(2) 出願後
受理された時点で仮保護が受けられます。旧法では登録後でなければ保護が受けられず、出願中に悪意の第三者に種苗を販売される可能性がありましたが、新法では保護が早くなりました。
出願されてひと通り書類審査が終わった段階で、出願番号、出願者の氏名、出願品種の名称等が官報に記載され、公表されます。これを出願公表といいます。個々の事例で異なりますが、出願六ヶ月後が目安です。これは、出願の事実を広く公表することで、関係者に広く知らせ、仮保護の品種の特定、及びその品種に関する関係人からの情報提供(すでに○○○○の所有している品質と同じである、その品種は盗まれたものである等)早期に得るためのものです。
出願から約一年以上経過した時点で、種苗課か種苗管理センターから苗や種子を「○○○○」へ送るように指示が来ますので、事前に種苗の準備をしておく必要があります。
同時に対照品種の提出も求めら得る場合がありますので同様に準備しておきます。その数量は種子系品種では1000粒程度(数ミリ)、栄養系品種では植物によって10〜60本程度。
この際の種子、または苗で出願品種の全てを代表することになりますので、種苗管理(混種、種子の発芽能力)を徹底しておきます。また、出願後に追加資料の提出を求められることもあります。
場合によっては、現地圃場に、種苗課の審査官、知識者が来て直接調査していくこともあります。厳密な区別はされていませんが、出願者が農家、農協、任意団体などの公立機関でない場合、あるいは調査圃場が十分に設定できない場合などには、種苗管理センター、都道府県の試験場で栽培試験が実施されます。
種苗商社、公立機関の出願、あるいは果樹、椿、桜、林木などの永年性樹木で、その品種の特性を他の場所で調査するのに相当な年数を要するものは現地調査が原則です。対照品種を含めて、いつでも調査を受けれるように圃場の維持管理が求められます。もっとも突然訪れることはなく、年度当初に文書にて実施予定時期の通知がありますので、不都合が考えられる時は次年度に延期する旨、願いを提出します。
(3) 登録後
順調に審査が進むと、現地調査或いは種苗の送付後二年程度、出願から2〜3年で登録されるのが標準的な年数です。種類により審査に要する時間が異なりますので、出願順に登録されるわけではありません。
特に花き類は、出願件数の75%を占めていますので、時間を要しているのが実情です。
毎年、その期間は短くなってきています。審査の過程で出願時の特性と著しく異なることが判明したり、記載内容に虚偽の記述があると判定された時は、登録が大幅に遅れるか、拒絶になります。
登録された時点で、その品種が新品種である事実を、品種登録簿に特性と共に掲載され、連番を与えられて登録証が交付されます。共進会で農林水産大臣賞を獲得するのは極めて大変なことですが、大臣名の書かれた公文書を最も簡単に手に入れられる方法が種苗登録です。登録後、その権利を継続して主張(所有)する意思のある場合には登録料を納付しなければなりません。この登録料を有効期間中継続して納付することで権利が保証されます。納付がなかった時点で更新の意思なしとして、登録そのものの事実は残りますが、権利は抹消されます。
登録料は次のように設定されています。すなわち、登録初期年帯では一年間6000円ですが、登録からの時間が経過するにしたがって高くなり、中期年帯以降では一年間36000円になります。これは登録から時間の経過と共に、権利を行使して、その品種から十分な利益を得たと判断されるからです。納付遅れても六ヶ月以内であれば倍額の納付により登録は継続されます。
登録期間は最長で永年性植物は二十五年、一・二年草は二十年となっています。因みに、果樹の品種権利を最長期間維持した場合は、出願から累計で約72万円となります。
1〜3年 − 6000円、 4〜6年 − 9000円、 7〜9年 − 18000円、 10〜25年 − 36000円、
登録後であっても、上記の登録料未納付以外に、次の様な場合には登録が抹消されます。
- 品種登録当初から登録の要件を満たしていなかった時→→虚偽の記載の判明。
- 品種登録後に登録の要件を満たさなくなった時→→登録後にその品種の特性が登録時と明らかに異なって来たことが判明した時。
- 各種の命令に従わなかった時→→登録後に疑義が生じ、追加資料の提出要求に対する拒否、放置。登録後に、品種名に関して不都合とされ、職権による名称変更命令に対する拒否、放置。
- 権利継承者がいなくなった時→→登録権者の死亡後、継承者が存在しない時、企業の解散。
5.出願のメリット、デメリット
何のために登録出願するのか、この点の考慮も必要です。品種の特性把握、品種登録願い、説明書などの記入は、普及センター、試験場で協力して作成することは可能ですが、出願に要する金銭的経費、労力を考えておくべきです。この世に一つの品種であるとの満足感を得るためでもいいでしょう。権利を売る、種苗を販売するなどで実利に繋げるのもいいでしょうが、そう期待はできないものです。
積極的に販売していくのであれば、特に花きの切り花、鉢花では、シリーズ名を付けて色揃いをする(ラインナップ)などの考え方あります。早生系・晩成系・矮性・高性という特性を持つシリーズを順次追加していくことも必要になってきます。草姿、花形が従来と明らかに異なるような品種の場合、短期間に数品種を育成(出願)して、一気にシリーズ化することが望まれます。