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施設果菜類の高温対策
千葉県農業総合研究センター
川城 英夫
今夏は、30度を越える真夏日連続日数が過去最高の40日となるなど、記録的な猛暑であった。地球温暖化は着実に進行しており、野菜生産者にとって夏季の高温対策は切実な問題である。
そこで本稿では、高温と施設果菜類の生育、施設の高温対策、夏季にハウス栽培する本県の主要な野菜であるトマト、キュウリの高温対策についてまとめてみた

高温と施設果菜類の生育
 果菜類の多くは昼間の適温が20〜30℃で、適温を越えると光合成速度が低下するとともに呼吸による消耗が増大して、果実の肥大不良や品質低下を招く。ちなみにトマトでは25℃を超えると光合成速度が急激に低下する。
 一方、適度な高温に短期間さらされると高温に対する耐性が高まり、トマトやキュウリなどでは40℃程度までよく耐える。これを高温順化と呼んでいる。さらに温度が上がって45℃以上になると、短時間で葉がカールするなど、目に見える高温障害の症状が現れるようになる。
 しかし、高温障害を起こす温度は、器官や生育ステージによっても異なる。一般に地上部は地下部より、大きく成長したものは幼植物に比べて高温に強い。また、生殖器官の分化・発達から開花受精の時期は温度に敏感で、この生育ステージでは一時的な高温が収量・品質に決定的な影響を与えることがある。例えば、花粉発芽の高温限界については、トマト、ナスでは35℃、キュウリで40℃と考えられる(表)。イチゴでは40℃以上の高温によって雄ずいの稔性が低下する。
 さらにトマトでは、最高気温34〜35℃でも相対湿度が40%ほどに低下すると水分ストレスを受けて子房枯死を引き起こし、ホルモン処理をしても着果しなくなることがある。トマトの抑制栽培では、高温に低湿度条件が加わって着果不良を招いている事例がしばしばみられる。
 以上のようなことから、高温期においても施設内気温を35℃以下に下げるような工夫が求められる。また、高温期には病害虫の被害も多くなるので、この面での対応も重要である。

施設及び装置による高温対策
 施設内気温の昇温抑制は、換気による蒸発散の促進、細霧冷房による気化冷却、遮光による日射の抑制が基本になる。
  • 屋根開放型温室
     屋根面をほぼ全面開放できる屋根開放型温室が開発されている。当農業総合研究センターではイタリア製のフチュラハウス、ベルギー製のカブリオハウスを導入し、栽培及び環境面での調査をしてきた。一般的な施設では、換気をしても日射が強い場合は3〜4℃しか温度の上昇を抑制できないが、屋根開放型温室では外気温にほぼ近い温度にまで昇温を抑制できる。しかし、施設コストが高いため、野菜では普及性が乏しい。
     一方、スーパーソーラーの様なポリオレフィン系フイルムを展張し、フイルムの巻取りによって屋根面を開閉するフルオープンハウスは、施設コストが通常のハウスとさほど変わらず、抑制トマトや促成イチゴの周年被覆栽培、ビワやミカン、ナシなどの果樹のハウス栽培で実用性が認められている。

  • 細霧冷房
     粒形約50μ以下の霧を発生させて施設内で蒸発させ、気化冷却を図る方法を細霧冷房という。冷房のほか薬剤散布や葉面散布など、多目的利用が出来る。高温乾燥時には室温の低下と過湿ができるので利用価値が高い。
     制御はタイマーと温度センサーを組み込んだコントローラーを利用する場合が多い。高湿度条件下での軟弱徒長防止や葉の濡れによる病害の発生を防止する制御法が確立されるならば、普及性がさらに高まるであろう。工事費を含めた10a当りの設備費は100〜150万円である。

トマト、キュウリの高温対策
トマト(促成及び抑制栽培)
 育苗から定植期にあたるトマトでは、定植後の活着不良、葉焼け、着果不良が問題となる。ミニトマトでは、高温障害が花房の異常分化や著しい着果不良として現れることがある。高温期にはアブラムシが媒介するキュウリモザイクウイルス(以下CMVとする)によるモザイク病のほか青枯病が発生しやすい。
 対策として、本圃は定植前に100o以上の灌水をして下層土の含水率を高めておく。定植後には、土壌水分保持と地温を下げて、活着を促進するために、敷きわらをする。
 花房開花期にハウス内が35℃を超えるような日は、通路に散水して室温を下げる。カーテンか遮光資材で高温になる午前10時から午後3時ごろまで遮光する。
・CMVによるモザイク病の発病防止対策
 CMVに感染すると、葉はモザイク症状や糸葉になり、茎葉や果実にはえそ症状が現れたり条腐症状が生じることもある。
 この被害を防止するため、育苗ハウスの周辺はアブラムシの寄生する作物や雑草を除去する。寒冷紗やダイオミラーなどをハウス開口部に展張して、アブラムシの侵入を防止する。病原ウイルスはアブラムシ伝染のほか汁液でも伝染する。このため整枝、剪定、収穫作業などの際にハサミや手によって周辺の株に伝染するので、発病株は見つけ次第直ちに抜き取る。

・青枯病の発病防止対策
 病原菌は細菌の一種のシュードモナス菌で、地温30℃以上の高温期に、地下水位高いか土壌水分が多いと発病が助長される。被害植物の茎は根と共に土壌中で長期間生存し、土壌伝染する。
 敷きわらを行って地温を低下させる。播種期を遅らせて地温が30℃を割ってから定植する。高畦にして排水を図る。
 前年多発した圃場では必ずクロルピクリン剤などで土壌消毒を実施する。さらに、抵抗性台木に接ぎ木すると良い。その際、穂木と台木のタバコモザイクウイルス抵抗性遺伝子型を合わせる。

キュリ
 本県のキュリ抑制栽培は、7月下旬から8月上旬播種、8月中旬から下旬にかけてハウス内に定植、収穫は9月中旬に始まる。高温下では、定植後に葉やけや活着不良が起きやすい。CMVによる葉や果実のモザイク症状、ズッキニー緑斑モザイクウイルスによる急性萎ちょう症状の発生が問題となる。
 トマト同様、本圃は定植前には十分な灌水を、定植後は敷きわらを実施する。砂地地帯で、定植後室温が40℃を超えるような場合、通路に散水したり、株に水を噴霧するなどして、室温及び葉温を低下させる。トマトと同様にカーテンか遮光資材で遮光する。
 CMVによるモザイク病対策はトマトのCMV対策に準じて行う。急性萎ちょう症については以下の対策を実施する。
  • モザイク病(急性萎ちょう症)の発病防止対策
     はじめは成長点付近の新葉が日中軽くしおれ、朝夕や曇雨天時には回復する。この時点では新葉のモザイク症状は認められないことが多い。葉や根の異常も見られない。
     その後、しおれは全身に及び、萎ちょう株は枯死にいたる場合と回復する場合とがある。
     萎ちょう症状が回復する頃には新葉に明瞭なモザイク症状を呈するようになる。発生する株はいずれもブルームレス台木に接ぎ木したものである。
     発生原因は、ズッキニー緑斑モザイクウイルスの単独感染、またはCMV,カボチャモザイクウイルス、パパイヤリングスポットウイルスとの重複感染と考えられている。
     いずれの病原ウイルスともアブラムシによって伝搬するもので、トマトのCMVによるモザイク病防除に準じてアブラムシの防除を実施する。
     本症は軟弱徒長株や着果負担の大きい株で発病が助長される傾向がみられる。また、収穫期に高温と強日射の日が続き、蒸散量が増加する。このため、不必要なかん水を控えて地上部と地下部のバランスのとれた生育を図ることが重要である。
     発病が認められたら、摘果を行って着果負担を軽減し、軽く摘葉をして蒸散量を抑制する。
     病原ウイルスは汁液伝染もするため、整枝、剪定、収穫作業などの際にハサミや手によって周辺の株に伝染するため、発病株は抜き取るか、作業の最後に回す。
表 施設果菜類の高温障害を起こす温度(渡辺、高橋より作成)
種 類 高温障害を起こす温度
トマト 35℃花粉発芽の高温限界
35℃では同化作用よりも呼吸作用が大きく、
炭水化物の消耗が大きくなる
45℃で葉巻が生じる
ナス 35℃が花粉発芽の高温限界
45℃で葉がカップ上になる
キュリ 40℃が花粉発芽の高温限界
45℃で茎の先端が枯死する

 
印西市大森
長浜浩文さんの美味しくて安心なトマトづくりの取り組み
印西農林振興センター
北原 久美子
 長浜さんは、現在36歳。20歳の就農の翌年からハウスを建て、農薬や化学肥料をなるべく使わないトマトづくりを貫いてきた若きホープです。長浜さんのご両親は、露地野菜を中心とした行商農家でしたが、畑があちこちに分散していたため、もっと集約的な営農をしようと、ご両親とは違うトマトづくりに専念されてきました。
 その頃はあまり有機栽培とか、食の安全・安心という言葉を耳にすることはありませんでした。しかし、長浜さんは既に「いずれの日にはきっと、とても大切なことと思われるようになるな」と感じていたそうです。
 それから「有機栽培を通して健全な樹を育てることで、農薬を少しでも減らせ、皆が喜ぶトマトが作れるのではないか。」と実践を続けられてきました。現在は千葉県独自の「ちばエコ農産物」の認証も受けました。「もっと早くその認証制度を知っていたらもっと早く申請書を書いていたのに」、「今後も取り組みをアピールするため、この認証申請は続けたい」と意欲を見せてくださいます。
 現在のトマトの栽培面積は約600坪で、年一作の2月から10月中旬までの長期どりです。毎年投入する堆肥は、馬糞、腐葉土、バーク、ぬか等を材料とした手作りのものです。基肥には有機質の肥料を使用しています。
 農薬についても「極力使用しない」というポリシーを貫いています。例えば葉カビ病の防除は、まったくの初期の予防的防除と、いよいよ駄目になるかなという時期に行うのみです。つまり、基本的には「収穫が始まれば農薬は使用しない」のです。
 使用品種はサンロードで、現在は地元の「印西農産物直売所」で販売しています。ここは地元の小さなマーケットであるため、他の農家のトマトとよく荷がかち合います。しかし、長浜さんのトマトはほとんど値引きをしなくても完売を実現しています。その理由は、お客さんの間で有機質であると認知されているためか、サンロードは普通の市場流通しているトマトよりも皮が軟らかく、お客さん言うとおり「昔のトマトの味がする」ためかと思われます。いずれにせよ、このように自分の作ったものの価値を値引くことなく販売できることは、農家であれば誰でもうらやむ心情ではないでしょうか。
 これからの夢は、もっと若い世代の客に戦略を絞ったトマトづくりをすることだそうです。今現在、固定客の年齢層のバランスがとても良いのに、それに甘んじない長浜さん。 もっと若い世代が好む大きさと味、そして収量性をも兼ね備えた栽培形態をつくってゆきたいと穏やかに語ります。

 
白井市今井
鈴木太巳生さんの観光ぶどう園
スーパーソーラー研究会事務局
中山 兼徳
 湖畔ぶどう園と呼ばれる、鈴木さんのぶどう園は手賀沼湖畔にある。周りは静かな田畑であるが、船橋、取手を結ぶ幹線道路に近く、印西市からも遠くなく、観光農園としては格好の位置にある。
 鈴木さんはぶどう園1haのほかキウイ園40a、水田2haを持つ。
 労働力は奥さんと二人、忙しい時にはパートを採用する。

ぶどう園の概要
 農耕地は自宅の周辺にあり、特にぶどう園は自宅に接している。親が15a程ぶどうを栽培していたこともあり、二十八年前頃に後継者育成資金を借りてぶどう園を拡充した。
 白井市には、組合としては九戸のぶどう栽培農家があり、総園地面積は約7ha、いずれの農家も観光農園であり、庭先販売である。
 ぶどうの品種は、巨峰が50%、その他は幾つかのヨーロッパ種である。八月のお盆頃から秋までが収穫期間。
 栽培の特徴はハウス栽培を導入していることである。13aは側面にもフイルムがある完全なハウス栽培であり、屋根面も側面も開閉できるようなオープンハウス。開花・収穫期間以外は巻き上げて、開けっぱなし。平成四年から行っており、ハウス栽培の経験は十年以上となる。そのほか45aはいわゆる雨よけ栽培である。白井市のぶどう栽培農家のうち二戸がハウス栽培を実施、ソフトソーラー及びスーパーソーラームテキを用いている。
 ぶどうのハウス栽培の良さは品質の向上と生産性の安定という。特に雨に弱く、天候に左右されやすいヨーロッパ種では安定栽培につながり、病害が少なく、減農薬に役立っている。またハウスの入った所に日陰をつくって庭先販売をしているため、買う方も雨天の影響を受けず、しかも農園のぶどうを身近に触れることもでき喜ばれている。
 栽培期間の農園の管理としては、農薬散布、かんばつ時の灌水、除草などがあるが、ハウス栽培が農薬の利用低減、スプリンクラーもあるが、樹園地を流れる田んぼの用水があるため灌水の苦労も少ない。
 ハウス栽培の良さのみ示したが、ハウス栽培の最大の問題は台風などの暴風対策である。フイルムを展張した最初の頃は強風の度にひやひやし、破れた所など手直ししていたが、普通のハウス栽培と同様にきちんと展張すると、かなりの風でも対処できるようになったという。台風直撃の場合は全面解放、その他の強風では密閉する。

これからについて
 現在、ぶどう作りの全国組織に参加して見学会に出るように努め、とくに栽培の先進地である山梨県や岡山県には栽培だけでなく、ハウス利用などについても勉強するよう出掛けている。
 夫婦二人で協力して、現在の経営を安定して進めることが第一であるが、技術的には新しい品種の導入を目指したいという。パソコン利用が趣味の一つであるので、そこから多くの情報を入手したい。オーストラリア、ニュージーランド、アメリカには研修に行っているが、ぶどうの本場であるヨーロッパに行って見たい。利用目的などはかなり違うが、栽培の伝統があるだけに、学ぶことが多いのではと夢は大きい。

 
地温を下げるマルチ資材
「ミカクール」
 
 白黒ダブルの白面の光反射力を大幅にアップし、やや厚手にしたマルチ資材「ミカクール」は白黒ダブルより4℃以上地温が低下する。ホウレンソウのように、夏の栽培で威力を発揮、長野県では夏のレタス栽培で注目されている。夏のハウス栽培利用には最適で、抑制のメロンで収量・品質が向上した試験報告もあり、高地温に起因するといわれるトマト、ナスなどの青枯病の抑制にも効果をあげている。また大きい光反射力を利用して、秋冬期のトマトや花栽培の生育増進のため、畦間にミカクールを敷く方法も進められている。
 ミカクールは価格が白黒ダブルの約2倍と高い。しかし、やや厚く、耐久性を高めているので、ハウスでは二作ぐらいは使用を望みたい。

 
ソフトソーラーとUVソーラー
 
  • ソフトソーラー・UVソーラーとも長い使用実験をもつスーパーソーラーの姉妹品で耐久性・光透過性など基本性能は同じ。
  • スーパーソ−ラー専用の防曇剤はソフトソーラー・UVソーラーとも相性が極めて良く、規定通りに直接塗布すると、一回の塗布で効果は長期にわたり持続する。(スーパーソーラーの実績10年以上)
    (あらかじめ防曇処理をした汎用的なものは、展張後の防曇効果が劣り、朝方フイルム内面に水滴が付き防曇性発現に時間がかかります。)
  • 水滴が付きにくい、つまりハウス内の適度の乾燥と優れた光線透過特性とが相まって、ソフトソーラー・UVソーラーは作物の健全な生育・品質の向上を促すとともに、UVソーラーでは病害の発生も軽減する。
  • マルハナバチ利用は出来るが、特にUVソラーではマルハナバチの種類(メーカー、販売元)による差異があるので事前チェックは必要。
防曇剤塗布にあたって、お忙しい場合には千葉県の皆さんには、ベテラン作業員が応援に伺います。
遠慮なく「みかど化工(株)」へお申し付け下さい。

当社の全てのフィルムは、農作物栽培現場におけるフィルム劣化促進作用を軽減するために、特許第2138850号に基づいた特殊配合を施してあります。 Copyright Mikado Chemical M.F.G Co. All Rights Reserved.
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