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切り花、鉢花フォーラム開催される
 
5月27日、好天に恵まれた中、千葉県安房地区の花き生産者を中心に千葉県内の試験研究機関、農林振興センターの先生方および賛助会員など56名の参加のもとで、千葉県農業総合研究センター暖地園芸研究所(館山市山本)にて、「切り花、鉢花フォーラム」が開催された。
フォーラムは「1.暖地園芸研究所花き研究室、環境研究室の研究圃場見学」、「2.講演および技術懇談会」より構成された。テーマ講演として、「1.安房地区における切り花、鉢花生産の現状と問題点(暖地園芸研究所花き研究室、神田美知枝室長)」、「2.切り花、鉢花生産の感どころ、(元潟~ヨシ専務、魚躬詔一氏)」の2講演があった。技術懇談会においては安房地区で「なぜ切り花なのか」、「安房の花生産の生き抜く道は」、「花以外の品目で複合経営はできないのか」、等について種々意見交換がなされた。
フォーラム開催にあたってはスーパーソーラー研究会の間宮源一郎氏、佐粧隆夫氏、渡辺勇氏、大溝長雄氏および暖地園芸研究所、松嶋所長、神田室長ほかの甚大なるご協力があり感謝申し上げます。

1.暖地園芸研究所花き研究室研究圃場、環境研究室研究圃場見学概要
1ー1 花き研究室研究圃場
種谷研究員、加藤研究員の案内で研究圃場(環境研究室研究圃場を含めて)を約1時間見学した。バラ、スターチス、トルコギキョウ、カーネーション、などの栽培技術の研究および育種の研究も行っているそうです。コロンビア、エクアドルからの輸入切り花は品質が良いとのこと、これらに対抗する上で、千葉県産切り花の流通を考慮して、花もちを良くする研究やバケット輸送についての研究も行っている。トルコギキョウについては品種特性についての検討、カーネーションについては長期栽培の研究、仕立て方法の研究なども行っている。

1ー2 環境研究室研究圃場
植松室長の案内で圃場見学を行った。概要は下記の通り。
(1)病害虫防除の研究
* バラ、― 殺ダニ剤の試験、 ウドンコ病に対する薬剤試験
* カーネーション、トルコギキョウ、 − ネギアザミウマ防除対策および薬剤の選定
* 果樹(ナシ、ビワ)、− カメムシ類の防除対策
(2)養液栽培での病害防除対策
バラのロックウール栽培での循環液の簡易ろ過膜の検討
(3)土壌汚染防除対策
(4)病害虫の診断
生産者からの診断依頼で昨年は200件以上あった。生産者からの依頼に対しては積極的に対応できるように努力している。

2.研究会の内容
1) 開会の挨拶
俵口事務局担当の総合司会により、大木寛会長の挨拶があり、開催場所をご提供いただいた研究所への御礼および有意義な研究会となる様にと期待を話された。
続いて、松嶋所長から当研究所は花き、果樹、野菜、等多様な生産構造を有する安房地区の生産者をバックアップしているので生産者は研究会を機に当研究所を活用してほしいとの話があり、更に、スーパーソーラー研究会が研究資材として野菜メロン研究室、果樹研究室、花き研究室、環境研究室等に提供しているスーパーソーラー等の被覆資材およびマルチ資材に対する懇切なお礼の挨拶があり、資材の優れた利用特性を話された。

2) 次いで、青木常任顧問の司会進行により、講演および技術懇談会に入った。
技術懇談会は魚躬詔一氏、神田美知枝室長、間宮源一郎氏、佐粧隆夫氏、渡辺勇氏、大溝長雄氏、および江上部長(みかど化工(株))を話題提供者として懇談した。
内容は(1) 安房で何故切り花なのか?、(2) 安房の花生産の生き抜く道は?、(3) 他品目との複合経営は?等についてであった。

3) 閉会の挨拶
スーパーソーラー研究会から、みかど化工(株)峯岸社長および渡辺勇監査の挨拶があり17時30分に閉会した。
 
テーマ講演
 
1.講演 「安房地区における切り花、鉢花生産の現状と問題点」
暖地園芸研究所花き研究室 神田美知枝室長
1. 生産の歴史および現状
安房地区の花づくりは遠く室町時代にさかのぼり、京都からの流人が切り花の礎を導入し和田町花園で花づくりを始めた、と言われている。江戸時代の中期にはスイセンを正月から早春にかけて江戸に運んだ記録がある。明治になりテッポウユリを江戸に運ぶと共に球根を欧米に輸出していた。大正10年に鉄道が開通するとキンセンカ、ストック等を切り花として和田町から東京に出荷した。昭和に入り、戦時中は花き生産は規制されたが、戦後、温暖な気候と大消費地に近い利点から他の地域に先駆けて、花き生産を伸ばしてきた。
平成14年度の千葉県の花き生産額は211億円(全国第4位)。その内、切り花は147億円で第2位、鉢花は36億円であった。安房地区の生産額は102億円で、主に切り花を生産しており、その額は千葉県の切り花の7割を占めている。

2. 栽培の特徴
最近千葉県全体、花き栽培が拡大してきた。その中で安房地区は露地栽培が盛んであるが施設面積の占有率も高く、とくに昭和46年の補助事業により施設化、団地化が進んだ。県北産地の拡大もめざましい。平成13年度のデーターで県内での占有率はガラス室41%(34.8ha)(千葉県、84.9ha)、ハウス52%(185.9ha)(千葉県、354.7ha)となっている。近年、ガラス室は老朽化により減少してきており、ハウス(スーパーソーラーの利用が多い)へ移行する傾向にある。とくに最近では県北地区の花き栽培が拡大してきている。安房地区は県北地区とは異なり、みんなで同じものを作るのを好まない。各自が独自のやりかたで生産を実施する傾向にある。反面、出荷体制が弱いと言う問題がある。

3. 栽培品目
栽培品目は多く、220品目以上ある。(表1参照)
安房地区の生産者は新しいものが好きで、新品種の導入が他の産地より早いとの定評がある。
最近は観賞用のヒマワリの栽培が増えてきている。
  無霜地帯 キンセンカ(5億円、全国1位)、ストックの生産が多い
ハウス栽培品目 キンギョソウ(増加の傾向)、カーネーション(20億円)、バラ(7億円)、
スターチス(3億円)、球根類(14億円、全千葉)
(表―1)安房における栽培品目
種 類 品目数 栽培面積が広い品目
1,2年草 78 キンセンカ、ハナナ、ストック(1年立)、キンギョソウ、分枝系ストック
多年草 39 SPカーネーション、小菊、STカーネーション、キク(輪物)、STバラ
球根類 46 日本水仙、アイリス、鉄砲ユリ、フリージア、ユリ(アジアテック)
枝葉花木類 52 ソテツ、ハラン、ニューサイラン、ツバキ
その他 7 花壇苗、 シンビジューム、カトレア、鉢物、オンシジューム

4. 技術
長年に亘る栽培技術の蓄積があり、品質面で優れているものが多く出荷され、品評会においても高い評価を得ている。
注 花き研究室には病害の相談、栽培技術に関する相談件数が多い。

5. 生産販売
生産販売組織は新興産地に比べて遅れており、共販率が低いことが指摘されている。一方、農産物直売所が増加し、殆んどの直売所で花を扱っており、インターネット等を使用した宅配による販売も年々増加している。
注 ハーブ、バラのバケット輸送が多くなってきており、研究機関では輸送および鮮度保持に関する研究が始まっている。

6. 問題点と今後
栽培コストの増加、販売単価の低迷と、全国共通の問題点を有する。生産者の高齢化が進み、労力の低下を引き起こしており地域特有の問題もある。輸入花きの増加対応および、生産者の高齢化対応が必要である。
増加する直売所でのホームユース需要への対応、鮮度の良さをアピールできる輸送方法の改善、特産花きの品質向上など老舗のブランドを更に高める努力と消費地に近い地の利を存分に活用してゆく工夫が必要である。また、輸入の花よりも鮮度、日持ちの点で優れていることを見直してアピールする必要がある。

 
2.講演 「切り花、鉢花生産の感どころ」
元(株)ミヨシ専務 魚躬詔一氏
(株)ミヨシにて、長年に亘って花きの新品種育成および販売に携わってきた先生が種々感銘を受けた事柄を事例に挙げて、これから花き生産に取り組む上での心構え、および励みになれば、と言うことで講演された。各事例に出てくる心構えは花き生産者だけでなく、多くの人達に共通する内容であり大変勉強になりました。

事例‐1  切り花用としての葉ボタン 三重県在住 奥隆善氏
今年の正月、奥氏より切り花葉ボタンが送付されてきた。通常、葉ボタンは正月の観賞用として鉢植え、寄せ植え、花壇などに利用する。送られてきた葉ボタンは長さ2メーターの箱に入っており、草丈1.2−1.4メーターで2本ないし3本に分枝していた。普通1本立ちのものは存在するが、分枝しているものは見たことが無かったので、大変驚いた。
通常、ハボタンは7月播種であるが、草丈を伸ばして分枝させるために5月上旬に播種したとのこと。2本―3本に分枝した切り花用葉ボタンの栽培生産は珍しい。
また、奥氏はアサガオの切り花としての利用も考え出した。からませる竹がない。ヨシズを支柱として使い分けた。
今迄のしきたりを打ち破ろうとする意欲、他人がやらない事をやる心意気がだいじである。

事例‐2  シャクヤク「タキノヨソオイ」の育成 新潟県在住 滝沢久寛氏
1972年(昭和47年)、20年間かけて「タキノヨソオイ」を育成増殖した。
気力と辛抱、売れるものを見極めた眼力、農水省種苗名称登録品種となった。

事例‐3  宿根カスミソウ、 メリクロンでの増殖
1973年(昭和48年)、房州の生産者がまずハウスに取り入れた。梅雨に当たると花が腐りやすかった。宿根カスミソウ、当時はさし木できなかった。接ぎ木で増殖していた。これを組織培養でメリクロン苗を増殖することに成功した。沖縄産カスミソウ、1本700円で売れた。カスミソウ御殿が出来た。夢を背負った作物だった。
夢を持つことが大切。夢を持った房州の生産者の努力の賜物である。

事例‐4  カーネーション「エンゼル」、 メリクロンでの増殖
1976年(昭和51年)、「エンゼル」は北九州が発生の地であったが、メリクロンで再生後は房州の生産者がその栽培体系を確立した。カーネーションは通常1000坪単位でないとハウス経営は難しいとされていたが、「エンゼル」は株当りの採花本数が多く100坪単位でも経営可能となった。これにより「エンゼル」ブームが続いた。生産者の創意工夫により「エンゼル」の栽培体系が確立された。房州の生産者の技術はすばらしい。

事例‐5  ガーベラ、 メリクロン苗の開発
種子系の苗(ヴァンウィック社、ヨンゲレネン社の品種系統)は植えるときに良い個体、悪い個体の区別がつかない。他方メリクロン苗は優劣がない。メリクロン苗の開発により種子系からメリクロン苗に変わった。メリクロン苗がガーベラを一変させた。生産者にとっては常に次の手段が待っている。日々これで良いのかと反省してほしい。日常の問題意識が大切。

事例‐6  宿根スターチス 長野県在住 小田切芳直氏
「アルタイカ」(種名)3系統を見つけた。3系統のうち1系統をメリクロンで増やそうと考えて、実現させた。従来あまり見向きされなかったものがメリクロンで増殖可能になったので人気者になった。幕下から大関に出世した。更に改良を加えた宿根スターチスは現在、オランダに輸出している。従来あまり見向きされなかったものが人気者になった。メリクロンのなせる技。

事例‐7  プラグ苗の話
1985年米国ボール社からプラグ苗技術を導入する時、日本に苗工場を作り販売することになった。当時、日本で初めてのプラグ苗技術導入の決断を鰍ンかど育種農場(故)越部平八郎前社長がした。米国では、プラグ苗は鉢物に使うのが常識であったが、日本ではなじめなかった。そこで、(株)ミヨシは切花に利用することを発想した。但し条件をつけた。1プラグから数本―10数本切れる種類を選んだ。1株1本しか切れないトルコギキョウの場合は1プラグに3―4粒播いて1プラグから3本ぐらい立たせた。既成概念を破ることが大切。「発想の転換」、を花き生産の経営のなかに取り入れた。園芸ではちょっとしたきっかけが重要である。

事例‐8  弁先に彩りのある覆輪トルコギキョウを房州在住 (故)堀海氏が育成した。
弁先に彩りのある覆輪トルコギキョウは従来無かった。これによりトルコギキョウに対する評価が一変した。市場での評価が高まり、売れるようになった。創造力と新奇性追求の努力。

事例‐9  スプレイストックの育種 房州在住 黒川氏
育種の過程での転機により成功した。夢物語を現実化した。創造力と感性。房州には素晴らしいブリーダー(育種者)が居る。
以上感じたままを述べたが「園芸の歴史」は繰り返すという信念を絶えず心に留めておくことが大切と考えます。

 
「技術懇談会」
 
1.「房州は花生産の元祖である。外圧に負けないで、何故産地として定着しているのか。」
  安房地区は古くから花栽培が定着して発展している。気候が年中温暖で、とりわけ夏でも比較的涼しいと言うことだけはない何かがあるのではないか探ってみたい。

間宮源一郎氏 昔、菊栽培を行っていた。東京市場に出荷していた。現金収入になった。菜の花、サヤエンドウの花を館山から東京に運んだ。金になった。ビニールが出た頃、雨よけしてカーネーションを栽培した。その後構造改善事業でガラス温室を建設し、カーネーション「エンゼル」、を栽培した。1本80−100円で売れた。花き栽培は収益が良かった。

渡辺勇氏 33歳で脱サラした。当初、700坪でカーネーションを栽培した。1本150円で売れた。現在、1000坪に拡大し、直売にこだわっている。当初、3名で直売所を開設した。現在会員130名。花き生産に対してはとりわけ作り易いという生産環境に恵まれていると考える。

佐粧隆夫氏 花き生産は昔から続いている。花を作るのは当たり前と言う感覚になっている。花は作り易い。房州の花は品質が良い。花だったら1年中現金収入になる。

魚躬詔一氏 歴史的背景がある。戦時中、政府が花作りを禁止した。しかし、心ある人は種子を隠して保管した(百日草、アスターなど)。また裏山に捨てた宿根草で生きていたものを再生した。房州の生産者は、この様に花に対して執念があった。

植松室長 (1) ネットワークがあり、情報量が多い。戦前からの花の研究資料が今でも残っている。生産者同士、切磋琢磨が行われており技術レベルが高い。
(2) 平均耕作面積5反歩、地の利がある。時代の要求が花の方に移っており、且つ地域特性が花の方向にすすんだ。


2.「安房の花生産の生き抜く道は」
  環境条件、(気象条件、土壌条件、立地条件、等)のなかで土壌条件、特に水質条件が花の生産に適しているのではないか。

水質 -  安房の水質と君津、北総の水質とは異なる。植物の生育に最大の影響力を与える養水分の果たす役割に地域差があるのではないか。安房の水には他産地と異なり、特に ナトリュウム成分が多いなどミネラル成分が豊かなことも産地化を後押ししているのではな いか。地域の環境を理解して、理由付けして更に安定した産地に発展させることが大切と思われる。地の利を生かして新たな換金作物の模索も積極的に行う必要がある。

3.房州の昔の立役者、グリンピース、ソラマメ等との複合経営を見直すことは出来ないのか?
  現在、グリンピース、ソラマメは鹿児島県が主産地である。食味低下の極めて大きいこれらの豆類は大消費地に近いという地の利や栽培経験のある有利品目として見直すことが必要ではないか。

渡辺勇氏 ソラマメは昭和30年頃大産地であった。しかし、ウイルス病の被害、忌地現象等で連作が困難であった。しかし最近、アブラムシ防除方法が確立され、安定した栽培が出来るのではないかと思う。現在、ソラマメを栽培しているが観光客に「おいしい」と好評である。地の利を生かした品目として注目している。
 
まとめ
 
 以上、講演および技術懇談会を進行させていただいた。神田美知枝室長には「安房の切花の現状と問題点」について詳細なお話を頂いた。全国共通の問題として花生産には絶えず省力、低コストおよび高品質化が求められている。こうした問題点を解決しながら歴史ある産地の特性を生かして、地の利を生かして、観光面も含めて多彩な産地対応が必要と考える。
 次に、魚躬先生からは、長い経験の中で忘れられない思い出話を多数伺うことが出来た。それぞれが聴衆の胸を打ち、花生産にかける意欲を奮い立たせるに十分なものであったと心から御礼申し上げたい。
 さらに、技術懇談会では安房地域の花栽培の存在および継続を問う錠を少しでも解き明かしたいと願った。少々時間不足で尻切れトンボの感が否めないが、多くの人達から積極的で有益なご意見を伺って感謝している。確かに、何となく生産者が感じている安房地区の花栽培は誰もが作り易い、作り甲斐がある、高品質の花ができる、と感じている様である。何故そうなのか、さらに解明して弛まない努力を重ねて産地として発展できる確固たる礎を作りたいものである。
 最後に講演をしていただいたご両人、および話題提供者の各位、そして遠路、ご多忙の中ご参集頂いた皆様に厚く御礼申し上げる。さらに、会場をご提供頂いた上、ご懇切なお世話を頂いた暖地園芸研究所に感謝申し上げます。


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